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M-1の裏で強さ見せた『陸王』と“リアルこはぜ屋”を特集した『ガイアの夜明け』を見比べる

  • 2017年12月05日(火) 12:00:48
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日曜劇場『陸王』(TBS系)第7話の視聴率は14.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と、前回より1.7ポイントの大幅ダウン。とはいえ、裏では言わずと知れた『M-1グランプリ2017』(テレビ朝日系)が平均15.4%も取ってますし、『陸王』が放送されていた21時台の『M-1』は、まさしく佳境でしたので、大健闘だと思います。

 というわけで、今回も振り返りです。

(前回までのレビューはこちらから)



■そして、ふりだしに戻る



 前回、ニューイヤー駅伝で陸王を履き、激走を見せた茂木くん(竹内涼真)でしたが、世間の反応は冷たいもの。ライバル・毛塚(佐野岳)の体調不良ばかりが取りざたされ、正当な評価を受けることができません。

 茂木くんの活躍で陸王のヒットを確信し、量産に入った「こはぜ屋」の宮沢社長(役所広司)の目算も大外れ。たいして売れない上に、大手メーカー・アトランティスの看板商品「RII(アール・ツー)」より圧倒的に性能がいいことがバレてしまい、アトランティスから妨害を受けてしまうことに。せっかく見つけたアッパー素材の提供元「タチバナラッセル」はアトランティスに札束で頬を叩かれ、こはぜ屋との契約を打ち切ると言い出しました。

 到底受け入れられない宮沢社長ですが、タチバナラッセル・橘社長(木村祐一)も創業3年の新興企業ゆえ背に腹は代えられず、こはぜ屋はアッパー素材をイチから探さなければならなくなりました。宮沢社長の長男・大地(山崎賢人)こそ「俺が探す!」と頼もしいことを言ってくれますが、難儀しそうです。

 そんな折、こはぜ屋の開発室が緊急事態に。陸王に絶対必要な革命的ソール材・シルクレイの製造機が火を噴いていました。幸い、ボヤで済んだものの、機械を持ち込んで顧問を務めていた飯山さん(寺尾聰)いわく「ダメだ、こいつはもうただの鉄くずだ」状態。試作段階の機械を騙し騙し使ってきたツケが、ここにきて出てしまったようです。製造機を作り直すには、1億円かかるとか。

 アッパーもない、ソールもない。つまり、何もない。当然、金もない。開発はふりだしに戻ってしまいました。宮沢社長に残されたのは、陸王への未練と、厳しい経営判断を下さなければならない状況だけ。もう陸王の開発はあきらめて、ただの足袋屋に戻るしかなさそうです。



■村野さん、ブチ切れる



 これに業を煮やしたのが、陸王企画に賛同し、こはぜ屋と運命を共にすることを決めたカリスマシューフィッター・村野さん(市川右團次)。徹底的に選手に寄り添うことをモットーとする村野さんは、「陸王を、茂木を見捨てるのか」と宮沢社長に迫ります。

「あいつらは命をかけて走ってるんですよ」

「生きるか死ぬかの戦いをしているんだ」

「安易にシューズなんか提供すべきじゃない」

「陸上競技者への冒涜だ」

 厳しい言葉を残して、村野さんはこはぜ屋を去っていきます。

 そして、命をかけて走っている側の茂木くんにも屈辱が訪れます。以前、一度ドタキャンされた雑誌「月刊アスリート」からの取材依頼を、陸王の宣伝になるなら、と受けた茂木くん。「茂木特集」のつもりで、取材では必死に陸王の良さをアピールしますが、実際に掲載されたのは「毛塚とそのライバルたち」の1カコミ記事。言ってもいない、毛塚に都合のいいコメントだけが掲載され、もちろん陸王の宣伝もゼロ。それどころか、この企画全体が毛塚に「RII」を提供しているアトランティスのタイアップだったようです。

 茂木くんは猛然と、城戸監督(音尾琢真)に「抗議したい」と訴えますが、「気に食わないなら走りで見せるしかない」「死ぬ気で走れ」とたしなめられます。もう陸王は、二度と提供されないというのに! かわいそう!



■シルクレイ飯山には天啓が



 そんなこんなで、こはぜ屋と茂木くんが絶望的な状況に陥る中、シルクレイの特許を持っている飯山さんには天啓が訪れます。世界的な新興スポーツメーカー「Felix」から、特許の独占使用契約を結びたいとの申し入れがあったのです。条件は年間6,000万円。

 ここで、こはぜ屋を切れば、飯山さんには大金が転がり込むことに。もともと飯山さんは、こういう状況を見越して、自分の会社を潰してまでシルクレイの開発に打ち込んできた経緯があります。まさに、渡りに船。マリアナ海溝に豪華客船。乗らない理由はないはずですが、どうやら奥さんともども逡巡しているようです。嘘みたいに義理堅い男です。金に転んだタチバナラッセルの立場がありません。



■決められない男・宮沢



 金に転ぼうとしているのは、こはぜ屋の宮沢社長も同じです。陸王への未練は断ち切りがたいが、金策の手段は尽きた。1億円なんて銀行は貸してくれないし、そもそも借りたって返せるあてはない。経営者として、決断の時は迫っています。金に転んだタチバナラッセルを「裏切り者!」と断罪した宮沢社長もまた、経営者として村野さんや茂木くんを裏切ろうとしている。今回の役所広司、ほぼ全編にわたって半泣きです。

 しかし、銀行を辞めてベンチャーキャピタルに転職することにしたスーパー銀行マン・坂本っちゃん(風間俊介)にド正面から「あなたはどうしたいんですか?」と詰められ、この状況でも大地がアッパー素材探しに奔走していることを知ると、覚悟を決めることにしました。

「やれるだけやって、それでもどうしてもダメだったときは、自分の意志で、ちゃんと決断してあきらめたい」

 大見得を切った宮沢社長の言葉を受け、飯山さんはFelixとの契約を断ることにしました。

 前を向いた、宮沢社長と、こはぜ屋。今回はたっぷり時間をかけてこの葛藤だけが描かれましたが、最後の最後に一縷の望みがもたらされます。

 VCに転職した坂本っちゃんが持ってきたのは、こはぜ屋の買収話でした。

「会社を、売りませんか?」

 なんとその買収先は、飯山さんが契約を断ったFelixでした。特許の独占ができないなら、会社ごと買ってしまえという、いかにもグローバル企業らしいダイナミックなやり方です。ずんずんずんずんと空港に降り立ったFelixの社長・御園(松岡修造)が大写しになったところで、今回はここまで。「月刊TVガイド」(東京ニュース通信社)の情報によれば、最終回は12月24日の第10話になりそうです。

 原作では、ここから先は松岡修造演じる御園が、物語を大きく左右することになります。役所広司と松岡修造の演技合戦が盛り上がりのカギになるということです。次回予告を見た限り、背が高くて顔がハンサムで、なんとなくカリスマ性を感じさせる松岡修造の立ち姿は、御園にぴったりだと思いました。それにしても、クライマックスへのキーマンを演技未経験の元テニス選手を、しかもお茶の間に浸透しているイメージとは真逆の冷徹で知的なキャラクターとしてブッキングする『陸王』のチャレンジ精神には感服します。おそらくは、勝算があってのことでしょう。ちょっと小難しい話にもなっていくので、松岡さんの熱演に期待したいです。



■もうひとつの“ただの足袋屋”の物語



 ところで、先月28日の『ガイアの夜明け』(テレビ東京系)は、「“陸の王者”を目指せ!」と題して、マラソンシューズの開発に乗り出した老舗の足袋屋が特集されていました。番組内では『陸王』の名前も出ませんし、ドラマのモデルだと公言もしていませんが、原作執筆の際に池井戸潤さんが取材に訪れたことで知られる「きねや足袋」という会社です。

 今回の『陸王』で、宮沢社長は「シルクレイがなければただの足袋屋に逆戻りです」と言っていますが、シルクレイはご存じのように架空の素材。つまり、「シルクレイがない、ただの足袋屋」が、どのようにマラソンシューズ開発に取り組んでいるのかが丁寧な取材で語られました。

 シルクレイもない、特別なアッパー素材もない。あるのは技術と創意と情熱だけ。役所広司よりだいぶ若い40歳のイケメン社長が、あの「Nike」(これも実名で登場)に挑む姿も、それはそれで胸に迫るものがありましたよ。今回、ドラマの大半でうじうじしてた宮沢社長を見るにつけ、きねやみたいにしっかりせえ! と思いました。

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